自動車内装 レザーの種類・お手入れ方法

自動車内装 レザー 種類あれこれ

基本的に自動車内装に使われるレザーは、故障や事故の際に燃え上がらないような難燃証明を取っている素材。牛革(バッファローもありましたが・・・)、またはシンセティックレザー(合皮)が使われています。高級バッグや一流革靴に使われるアニリンレザー(染色染め)は使われません。大昔の自動車にはアニリンが使われていましたが、まだその時代ではセミアニリンやピグメントが開発される前だったから。アニリンは最も革らしいエイジングが楽しめる半面、水や紫外線に弱く高温多湿にさらされる車内に合った耐久性を持っていません。同様の理由により家具でもほとんどがトップグレインからフルグレインまで(メーカーにより名称は異なる)。超高級家具もフルグレインだったりします。

ピグメントレザートップグレインレザー

高級車では最も一般的な本革、顔料染め加工されている。車種や使用用途により加工が少ないスムース系もあれば、SUVなどで多いシボがはっきりした型押しまで様々。(高級ブランドバッグでも多く採用されています)

セミアニリンレザー・ナッパレザー・フルグレインレザー

自動車用では最高級。しなやかな柔軟性と耐久性を両立しておりアニリン(染料染め)とピグメント(顔料染め)の中間的な特徴。トップコートも薄く皮の銀面を生かした表情のある革。その為、綺麗な部分で仕上げるには牛1頭から使える仕様部位は限られ非常に高価な材料である。

変わり種(アンティーク調レザー)

およそ70年代位までの旧車では、独特のむら感があるアンティーク仕上げのレザーも存在します。ポルシェでは964ターボのフルレザーパッケージ(恐らくオプション設定?)でも見られましたから90年代でも販売されていたのかも知れません。高級家具ではピグメントやフルグレインで、安価なシンセティックレザーでも売っています。そんな仕様のレザーを塗装で再現するのは非常に難易度の高い施工です。なるほ堂ではリペア可能ですからお困りの方はご相談ください。

シンセティックレザー・フェイクレザー

布を加工して革に近づけた素材、合成皮革です。その中でもポリウレタン樹脂加工されたPUレザーと塩化ビニール樹脂加工されたPVCレザーとがあります。PUの方が柔らかい、PVCは硬いが丈夫。しかし、どちらも本革には耐久性と質感で若干劣る。但し、どんどん進化して高品質なシンセティックレザーも出てきており国産車などではよく使われています。本革のレザーシートです!と宣伝されている物でも、実はフル本革とは限りません。体が触れる表面はピグメントレザーで側面には部分的にシンセティックレザーが使われている事も珍しくありません。(ユーザーさんも気づいていない事が多い、それほど品質は上がっている?)

ヴィーガンレザー

SDGsへの貢献に目を向けた自動車メーカーは、今後のブランディングにヴィーガンレザーを取り込むのではないでしょうか?既にフォルクスワーゲンは2019年のEVショーカーに「アップルスキン」と呼ばれるアップルレザー(ヴィーガンレザー)を採用しました。テスラはモデルXで設定してますね。動物や石油系ではなく植物由来の原材料を使用したシンセティックレザー。現状ではPVCやPUよりも製造コストが高いようですが、耐久性は上だと言われています。もしも、リペアする事になったとしても問題はなさそうです。

アルカンターラ・ウルトラスエード・エクセーヌ

東レが開発した人工スエード。非常に耐久性が高く質感も良いため高級車ではよく使われています。タバコ穴はリペア可能だが塗装が出来ないのが難点。

レザーシートのお手入れ方法

お手入れ方法

新車時は表面の防汚加工が効いており大抵の場合、埃を払った後に柔らかいウエスで空拭き、取れない汚れは硬く絞ったウエスで優しく水拭きと空拭き、それだけで問題ありません。

こまめなお掃除をしていないと埃を取るのに掃除機を使う方が多いのですが、グリグリ押し付けてしまうと硬い先端で革を傷つけてしまう事もあります、可能であればブロアーで吹き飛ばす方が傷つけないで綺麗にする事が出来ます。

そもそも、シンセティックレザーはもとより、ピグメントレザー、ナッパレザー、どれもトップコーティングされております。メーカー指定のレザークリーナーやメンテナンス剤を使うのは良いのですが、鞄や靴用などアニリンレザー用のものは避けた方が無難です。(テカリや変色の原因になる事もあります)市販のレザークリーナーを使いたい場合は必ず目立たない所でテストしてください。(擦り過ぎたりすると色落ちします)

中古車の場合は、個体差が大きいので難しいと思います。何度もクリーニングされて防汚性能は落ちていますし、ひび割れや擦れている事もあります。水拭きや雨で濡らし過ぎてしまい放置してしまうとシミや縮みの原因となります。優しく拭いても取れないようなら業者に依頼する事をお勧めします。

長持ちさせるには

紫外線からの保護として一番最適なのは室内ガレージ保管、車体カバーも有効です。また、外出先でもガラスへのサンシェードは使った方が良いでしょう。

また、地下ガレージ(特に機械式の下段)に保管している方はカビ対策も重要です。大事にクリームを塗り過ぎて湿度が高い場所で保管していると白カビだらけでショック!にもなりかねません。(白カビはアルコールで落ちますが色落ちの危険もあります、リペア可能な業者にご相談なさって下さい)カビ対策としては少なくとも除湿剤、無臭の吸着タイプ(墨系)がお勧めです。

カブリオレ、スパイダー、タルガトップ、ボクスター、等のオープンカーは特に注意が必要。雨に濡れて紫外線にさらされる機会が多く本革の場合は硬化や縮む原因となります。間違っても濡れた後放置しないようにご注意ください。(幌やルーフの雨漏れも同様)実際、表皮がガチガチに硬化して破れているケース(素材の限界を超えている)ではリペア不可能となってしまいます。

シートヒーター、ベンチレーションについて

ご利用の方はその快適性にご満足されているであろう機能。ここにも注意すべき点があります。特にフル本革のタイプ(部分的にメッシュファブリックだと多少安心)は、パンチングレザーになっていますね。穴が開いているからこそ涼しさや温かさを感じるのですが、そのため革の水分油分は揮発しやすくなります。維持するためには小まめなお手入れが通常よりも必要です。パンチングのセンターピースは定期的にメンテナンス剤で油分を補うと長持ちします。濡れた状態でヒーターを使うのはNG。フルレザーのベンチレーション仕様では穴も大きく強度的にも通常レザーより劣ります。シートを前に倒す際は優しく動かしてください。シートベルト受け側のパーツが当たって破れてしまう事もございます。拭き掃除も優しく。(ゴシゴシすると穴の周りから剥げてきます)

NG行為!

自動車用と言っても革は天然素材です。肌に当てたら火傷するように、間違ってもスチームクリーナーやメラミンスポンジの使用はNG。シートが痛がります(;^_^A

雨で濡れた後は乾いたウエスで拭き取ればほぼ問題ありません。拭かずに放置すると革の硬化が進んで寿命が縮んでしまいます。強制乾燥は尚NG、確実に革は縮みます。

濡れた状態でシートヒーターを使うのはNG。

なるほ堂のクリーニング&トリートメント

  • 埃の除去(ウエスや馬毛ブラシ)、ブロアーで拭き飛ばします
  • 浅草のブラシ屋さんから仕入れた専用ブラシで繰り返し汚れを浮かせて優しく拭き取る
  • トリートメント塗り込み
  • 暫くしたあと、丁寧な拭き上げ

リペア後のメンテナンス

ナッパレザーやセミアニリンレザー同様、原則として、空拭き、水拭き、となります。どうしても汚れが取れない場合はご相談ください。(市販クリーナーはNG,使用する場合は自己責任でお願いします)

アニリンレザー~セミアニリンレザーへ染め直し例

10年以上経過してすっかり退色してしまったアニリンレザーの鞄(ボッテガヴェネタ)、アニリンレザーなので経年劣化していても革は柔らかいです。これを染色してから顔料染してセミアニリンレザー仕上げにしました。顔料染の方法もとても薄い染め方をしているため革の柔軟性は保たれています。

※逆にセミアニリンレザーやピグメントレザーをアニリンレザーへは変えられません。